シャンパーニュ・ポール・ロレ
CHAMPAGNE PAUL LOREY

生産者のBaudryは、1650年代にその歴史を刻み始めた由緒あるメゾンで、シャンパーニュ愛好者の間ではその名を知られる存在です。現在、11代目の当主としてArmelさんとJoseさんの兄弟が経営にあたっています。二人は長年受け継がれてきた伝統を守りながらも、新しい手法を取り入れ、独自のシャンパーニュ造りを展開しています。
所有する20haの畑は、様々な向きと土壌を持ち、そこから生まれるワインはその年の気候によって微妙に異なります。南向きの急斜面では太陽の恩恵を最大限に受ける一方、北向きのやや穏やかな斜面は、より控えめな日照でブドウの美しい酸味を保つことができます。

コート・デ・バールに位置する自社畑の土壌は粘土質と石灰質が主で、特に石灰質の区画は水はけが良く、ブドウの根が水を求めて深く伸びることで、凝縮感のある果実が実ります。この結果、ベースワインはマルヌ地区よりも華やかな香りを放ち、まるでブルゴーニュのワインを思わせる味わいに仕上がります。
畑作りへの細やかなこだわりも特筆すべき点です。メゾンでは、たい肥として枯れ葉や牛のふんを混ぜ、1年かけて屋外で発酵させたものを使用しています。このたい肥を表面にまくことで石灰質の硬い土壌の水はけを調整し、ブドウの健やかな成長を支えています。また、除草剤は20年間使用していません。雑草をあえて残すことで水はけを良くし、水分が必要な時は抜いて調整するなど、自然との共生を重視した手法を採用しています。 ブドウの品質への徹底したこだわりもメゾンの特長です。今年、カビによる害が出た際も、被害を受けた区画を丸ごと収穫せずに見送るという判断をしました。このような慎重さは、彼らのシャンパーニュが高い品質を維持する理由の一つです。特に、コート・デ・バールという恵まれた立地条件によってピノ・ノワールが非常によく熟し、ムニエを育てる必要がないという点も特徴的です。
ワインの醸造は区画ごと、品種ごとに分けて行われます。アルコール発酵が終わった後は、約3～4ヵ月でアッサンブラージュされ、ソレラシステムを用いて熟成されます。リザーヴワインは最長6年まで使用され、古くなった味わいが出てきたら全てを捨て、新たにリザーヴワインを造り直す徹底ぶりです。このような工夫により、常にフレッシュでありながら深みのあるシャンパーニュが生まれるのです。
瓶内二次発酵では、ジャイロパレットを用いて約5日間で完了させます。これにより、均一な品質を保ちながら効率的に生産することが可能です。 メゾンのシャンパーニュは、何世代にもわたる職人技と現代的な手法の融合によって造られています。自然と共に生き、最高の一杯を追求するその情熱は、1650年代から続く誇りそのものです。

このシャンパーニュは、毎年ほぼ同じブレンドで作られ、安定した味わいを提供することを目指しています。15種類の異なるタンクで熟成されたワインを巧みにブレンドし、バランスの取れた風味豊かな仕上がりを実現しています。この技法により、深みと洗練された味わいをもつシャンパーニュが生まれます。
グラスに注ぐと、多層的でエレガントなアロマが立ち上り、リンゴ、レモン、パイナップル、白桃、そして白い花の香りが広がります。その香りはまるで花畑の中で風に揺れるように華やかで、最初の一口から心を掴んで離しません。
口当たりは柔らかく繊細で、細かい泡はクリーミーさを保ちながら豊かなアタックが丸みのある味わいへと進化します。アロマの調和と複雑さが、このシャンパーニュを非常にエレガントで印象的なものにしています。その広がりは豊かで、まるでシャンパーニュそのものが語りかけてくるかのようです。
ビジュアルにもこだわり、黒と金のラベルがシンプルながらもエレガンスを表現しています。このデザインはフランスの贅沢さを象徴し、シックでクラシックな雰囲気を漂わせています。特別なひとときにふさわしい、至高のシャンパーニュです。