1853オールド・ヴァイン・エステート
1853オールド・ヴァイン・エステート
1853OLD VINE ESTATE
2012年、フィロキセラ禍以前の
フランスから持ち込まれ、
自根栽培で現存している
奇跡のブドウ畑が発見されました。
ヨーロッパではほとんど失われた
オリジナルのDNAを受け継ぐ
世界でも希少な
マルベック種から生み出された、
ワイン愛好家に
必ず飲んでほしい特別なワインです。
プレ・フィロキセラのDNAが残るぶどう畑
|| フィロキセラ禍
19世紀後半、アメリカ大陸からヨーロッパへ持ち込まれたフィロキセラ(ブドウネアブラムシ)は、フィロキセラに抵抗力を持たないヨーロッパのブドウ畑を食い荒らし、たちまち広がっていきました。
1862年にフランスで発生した被害は、わずか10年のうちにスペイン、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、イタリアと周辺諸国へと広がり、ヨーロッパ中のブドウ畑を壊滅させました。
現在では、フィロキセラに耐性を持つアメリカ原産のブドウの台木に、ヨーロッパ系のブドウを接ぎ木して植える、という方法で対応するのが一般的となっています。長い年月の間に、ブドウ品種はフィロキセラへの耐性だけではなく、その他の病害への耐性を持つよう、また収穫量が上がるよう、少しずつ改良されてきました。
現在の多くのブドウは、栽培する上では非常に扱いやすい特性を備えていますが、オリジナルのDNAの味わいは少しずつ失われていきました。
|| フィロキセラの及ばない土地に受け継がれた
オリジナルのDNA
一方、アンデス山脈の周囲に広がるぶどう畑は、その過酷な環境のおかげでフィロキセラの被害を受けず、19世紀にヨーロッパから持ち込まれたブドウ樹が未だ残っている畑があります。これらは、接ぎ木もされず、品種改良もされず、当時のDNAを留めている貴重な存在です。
フランスでは見ることも難しい接ぎ木なしのフィロキセラ禍以前のマルベック種。それがアンデス山脈の麓メンドーサで、ウコ・ヴァレーの土壌を調査していたチームによって発見されました。詳細を調べた結果、このブドウ畑は、イタリア人移民家族が遥か昔に植えたマルベック種だけの畑であり、フランスからアルゼンチンに1853年にもたらされた木にルーツを持つ畑であることが判明しました。しかも、最も新しいものでも1910年植樹の古木だけで構成された、樹齢100年超のヴィエイユ・ヴィーニュの畑だったのです。
2012年、このブドウを使って、150年以上前に失われたマルベック種だけを使用した、ユニークなワインを造るというプロジェクトが立ち上がりました。情熱的な起業家、醸造家、ブドウ栽培家がこの計画に参画し、2016年、とうとうファーストヴィンテージとなるワインが生まれました。この驚異のワインは多くの専門家、ワイン愛好家の知るところとなり、たちまち入手困難なプレミアムワインとなりました。
アルゼンチンとボルドーでワイン造りの経験を持つ、醸造家のマルチェロ・ペッレリッティ氏は、このプレ・フィロキセラのマルベックについて以下のように語ります。
"まず、栽培上の違いですが、現在のマルベックは、ワイン産業の為に改良されているものが多いです。収穫量の増加、病害虫への耐性、管理のしやすさなど、大量生産が可能な性質へと少しずつ改良されてきました。それに対し、昔の木は管理も難しく、成長にもばらつきがあり、収穫量も少ないです。
オリジナルのマルベックは栽培家にとってリスクが増えますが、代わりにワインの味わいに複雑味、多彩な風味を与えることができます。一般的に、オリジナルの遺伝子をもつ自根ブドウから造られたワインは、素晴らしく調和がとれており、凝縮味があります。接ぎ木されたり、遺伝子改良を施されたりした木に比べると、より原初のブドウが持つ特徴と力強さを反映していると感じます。"
|| かつてのフランスと同じ『取り木法』で拡張された畑
1853オールド・ヴァイン・エステートの畑は、ムグロンと呼ばれる手法で拡張されたものです。 ムグロンとは、マルコタージュ(marcottage)、またはプロヴィニャージュ (provignage)と呼ばれているフランスの古い手法で、成木の枝の一つを土の上に置く、あるいは地中に一部を埋めて、そこでブドウの枝から根を出させます。そのまま成長させ、3年後に親木から切り離します。そのため、全てのブドウは接ぎ木されていない、自根のブドウとなります。
フィロキセラのいない環境だから可能な方法ですが、かつてのヨーロッパでは、この方法でブドウの樹を増やすのが一般的でした。この方法の場合、種子から増やされたものと異なり、100%同じDNAを持った個体になります。もともとは同じ木なので、完璧なクローンのようにその特徴を受け継ぐことができるのです。
1853オールド・ヴァイン・エステートのマルベックは、高樹齢であるため、また原初のDNAのブドウであるため、自然と低収量になります。平均的にブドウの樹1本に対し、4房が収穫できます。
房4つでワイン1本分程度作れますので、葡萄の木1本からワインボトル1本が造られる計算になります。
醸造家マルチェロ・ペッレリッティ
南アメリカ大陸出身の醸造家で初めてロバート・パーカーJr.から100点満点を獲得したマルチェロ・ペッレリッティ(Mar1celo Pelleriti)氏は、このプロジェクトに欠かせない人物です。
彼は、幼いころからワイン造りの世界に親しんでいました。祖父と一緒に農場でブドウを踏み、自家製ワインを造っていた幼少期の想い出が、醸造家として働くという夢の原点になった
と語っています。1994年、彼はウコ・ヴァレーのラ・コンサルタという場所にある祖父の農場で、初めてワインを造りました。その後、有名なワインコンサルタントであるミシェル・ロラン氏に師事し、ワイン造りの先端技術を学びました。
2001年より、フランスとアルゼンチンにワイナリーを所有するペレ・ヴェルジェ家(Péré-Vergé)の下で醸造家として働き始め、すぐに頭角を現します。毎年9月になると、ボルドーのポムロールでシャトー・ラ・ヴィオレット、シャトー・ル・ゲ、シャトー・モンヴィールのワイン造りに携わりました。半年後、今度はアルゼンチンに戻り、メンドーサのモンテヴィエホのワイン造りを行いました。そして、2010年には、彼が手掛けたメルロ100%のシャトー・モンヴィールがワイン・アドヴォケイトで100点満点を獲得し、彼の名は一躍世界に知られることとなりました。
2017年 James Suckling 94点
ワイン造り
このワインは、225L樽の中での発酵プロセスが含まれているのが特徴である。温度管理・制御が難しくなるため、通常よりずっと多くの観察とケアが必要になる。
収穫は全て手摘み。選別後、ブドウをフレンチオーク樽へ直接入れ、15日間コールドマセレーション(低温浸漬)を行う。ドライアイスを使って液面に二酸化炭素の被膜を作り酸化を防ぐ。この段階ではまだアルコールが発生していないため、特に注意して作業する。低温浸漬を行うことで、ブドウの果皮からアントシアニンやブドウの風味、アロマが抽出され、ワインの総合的な品質が向上する。その後ブドウを破砕し、アルコール発酵を行う。発酵中に樽を1日1回転させ、果皮や種からの抽出を促す。液体にブドウのエッセンスがしっかり抽出されたところで、ブドウを圧搾しワインを抜き取る。フレンチオーク樽にワインを戻し、24か月間熟成させる。その後アッサンブラージュを行い瓶詰し、12カ月間瓶熟成を行う。全ての作業は手作業で行い、ワインの味わいには手作りならではの独特の質感と、優雅さが表現される。
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2019年 James Suckling 95点
ワイン造り
収穫は全て手摘み。選別後、ブドウを温度管理可能なステンレスタンクへ入れ、10日間コールドマセレーション(低温浸漬)を行う。ドライアイスを使って液面に二酸化炭素の被膜を作り酸化を防ぐ。この段階ではまだアルコールが発生していないため、特に注意して作業する。低温浸漬を行うことで、ブドウの果皮からアントシアニンやブドウの風味、アロマが抽出され、ワインの総合的な品質が向上する。その後アルコール発酵を行い、フレンチオーク樽(古樽)へ移し、マロラクティック発酵を行う。12カ月間樽熟成を行い、その後バランスをとりつつ複数の樽のアッサンブラージュを行う。瓶詰後に最低でも12カ月熟成させてから出荷する。
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アルゼンチンは、世界で第五位の生産量を誇るワイン大国です。隣国チリと並ぶ優れたワイン産地でありながら、日本への輸入量は未だに10位(2021年度)、輸入量第2位のチリのスティルワイン輸入量40379klに対し、アルゼンチンは1478kl、わずか3.6%しかありません。日本ではまだまだ認知されていないアルゼンチンワインですが、その品質の高さ、サステナブルなワイン生産への取り組みが消費者の支持を集め、アメリカ、イギリス、ブラジルなどワイン消費大国では非常に人気のある産地となっています。
アルゼンチンのワインの歴史は、1551年スペインの植民地政策によって、 ワイン造りに適したブドウ品種であるヴィティス・ヴィニフェラが持ち込まれたのが始まりです。サンティアゴ・デル・エステロに、スペイン人宣教師がブドウの木を運び、栽培を開始しました。栽培地域は徐々に広がってゆき、19世紀中頃には、ヨーロッパからの移民によって、新しい栽培技術、そして多様な品種がもたらされ、ワイン生産量はさらに増加していきました。
アルゼンチンのテロワール
赤ワインなら果実味豊かで力強い味わい、白ワインならフルーティで華やかな香り。凝縮感があって親しみやすい、ニューワールドらしい味わいが特徴です。チリ同様手頃な価格で高品質なワインが生産されていますが、その理由は、ブドウ栽培に適した土地(テロワール)にあります。ワイン産地の7割はアンデス山脈付近のメンドーサに集中しており、この地域は標高が高く(600~1000m)、年間300日以上が晴天で、極度の乾燥、昼夜の寒暖差の大きさの恩恵を受け、優れたブドウが収穫できます。
加えて、その過酷な環境のおかげで病虫害の発生が非常に少ないため、多くの生産者は農薬や除草剤といった科学薬品に頼る必要がありません。一方で雨が少なく常に水不足のリスクをかかえており、灌漑設備は、ブドウ栽培における重要な条件となっています。生産者の誰もが、限られた資源を大切に使うことや、再利用を心掛けることを常に意識しています。
アルゼンチンワインの代表格は「マルベック」種を使った赤ワインです。ポリフェノール豊富で色が濃く、風味豊か。近代的な醸造方法のおかげでタンニンは滑らかで、濃厚なのに飲みやすい味わいが特徴です。世界で牛肉を最も食べる国と言われているアルゼンチンのワインなので、もちろん牛肉には抜群に合う味わいです。
ウコ・ヴァレー
ウコ・ヴァレーは、アルゼンチン北西部に位置し、メンドーサの一部とされていますが、現在はウコ・ヴァレー単体でも認識されるほど注目度が高まっている産地です。西と北にアンデス山脈、東には低い丘が連なります。ウコ・ヴァレーは、90 年代初頭に発見されたアルゼンチンで最も新しいワイン産地の一つです。もともと、川が近くを流れていることから、果物や野菜の栽培が中心だった土地でしたが、ブドウ栽培適地としてのポテンシャルが見いだされ、1992年、ニコラス・カテナ・サパタがブドウ畑を拓きました。
ウコ・ヴァレーは大陸性気候で、アンデス山脈の影響を強く受ける地域です。夏は暑くて長く、冬は厳しい寒さにさらされます。年間平均気温は約 15 °C ですが、昼夜の気温差は大きく、ブドウの糖度と酸度のバランスを維持するのに最適です。一年を通し、ほとんど晴天で雨は僅かです。しかし、アンデス山脈の雪解け水が流れ込む川が付近にあり、ブドウ畑は十分な灌漑設備が施されています。ブドウ畑の標高はおよそ850〜1100メートルに位置し、土壌は主に沖積土、砂、粘土岩で構成されています。水はけが非常に良いので、ブドウの樹は自然と樹勢が抑えられ、収量が落ち、その分凝縮した果実を実らせます。
現在では、ウコ・ヴァレーは世界最高のテロワールの一つと考えられており、そのポテンシャルの高さから、アルゼンチン国内・国外を問わず著名なワイナリーがこぞってこの地に投資をしています。
特にボルドーのワイナリーからの注目度は高く、フランソワ・リュルトン(Francois Lurton)やバロン・ド・ロッチルド(Baron de Rothschild)が既に進出を果たしています。また著名な醸造家であるミシェル・ロラン氏もウコ・ヴァレーの品質に惚れ込み、数多くのワインを手掛けています。多くの優れたワインが登場したことで、ウコ・ヴァレーの知名度は世界中で高まり、その結果、栽培面積は20年の間で約二倍に拡大しています。
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