シャトー・サン・ピエール
CHATEAU SAINT PIERRE

サン・ジュリアン村にある最も古い城の一つで、メドック4級格付けのシャトー・サン・ピエール。日本ではまだそれほど知名度が高くありませんが、名だたる格付けシャトーに隣接する好立地と、優れた作り手の努力によって、値段以上の味わいがあると高く評価されているワインです。

　シャトーがあるのは、サン・ジュリアン村のシャトー・ベイシュヴェルのすぐ裏手、デュクリュ・ボーカイユ、レオヴィル・バルトン、グリュオ・ラローズに囲まれた恵まれた立地で、堅牢な力強いワインを生み出すポテンシャルを備えていました。

多くの所有者の手を経て、1982年にサン・ジュリアン村の名士として名高い、アンリ・マルタン氏が、サン・ピエールの地所を買い取り、以後目覚ましい成長を見せます。
　彼は、まずいくつかの土地を近隣のシャトーに売り、元手を作るとシャトーを修復し、ワイン造りを改善しました。醸造所やその設備、ブドウ畑に投資を行ったことで、品質はみるみる向上し、シャトー・サン・ピエールはその格付け以上とも言われる、優れた品質のワインへと姿を変えたのです。

評論家のロバート・パーカー氏も、著書の中でこのシャトーを高く評価しています。

畑はCH.ベイシュヴェルのすぐ裏手にあり、立地はよい。車で通りすぎると、樹齢の高い、こぶだらけのブドウ樹の割合が高いことが見てとれる（これは常に高品質の証だ）。
ワインのスタイルとしては、リッチで、丸々と太った、がっちりした、フルボディ。常に深みのある色をしており、時には光を通さないほど濃いものになることもある。明白な力強さと筋肉が見られる。（『ボルドー第４版』より）

メドックの伝説的人物によって評価を高めたシャトー

アンリ・マルタン氏は、メドックで300年以上続く家に生まれ、その人生をボルドーワインにささげ、数々の功績を残した、ボルドーの名士です。
彼の祖父は、格付け2級「王のワイン」と呼ばれたグリュオ・ラローズの醸造家でした。父は樽職人として、ボルドーのワイン生産に貢献した職人でした。そして、アンリ・マルタン自身もワインの道へ進みました。

1950年代にはコマンドリー・ド・ボルドー(ボルドー委員会)の創設に携わりました。また1963年には五大シャトーの一角、シャトー・ラトゥールのマネージャーとしても活躍しました。

1991年、アンリ・マルタン氏は多くの人々に惜しまれつつもこの世を去りました。
その後は、彼の娘のフランソワーズとその夫であるジャン・ルイ・トゥリオ氏を中心に、アンリ・マルタン氏が運営したシャトーを引き継ぎ、守り続けています。